発達のミカタ

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「落ち着きがなかった」で終わらせない|ABC分析を使った支援記録の書き方

「今日は落ち着きがありませんでした」

「活動への参加が難しかったです」

「声かけをすると気持ちを切り替えられました」

放課後等デイサービスや児童発達支援の記録で、こうした表現を見かけることがあります。

書いている内容が間違っているわけではありません。忙しい現場では、限られた時間の中で記録を残さなければならず、どうしても短い表現になりやすいと思います。

ただ、この記録を数週間後に読み返したとき、次のようなことは分かるでしょうか。

  • どの場面で落ち着かなかったのか
  • その直前に何があったのか
  • 子どもは実際にどのような行動をしたのか
  • スタッフはどのように関わったのか
  • 何が気持ちの切り替えにつながったのか

ここが分からなければ、出来事は残っていても、次の支援に活かせる情報は十分に残っていません。

この記事では、児童発達支援管理責任者として日々の記録を確認してきた経験をもとに、ABC分析の考え方を使って、子どもの姿と支援の経過が伝わる記録を書く方法を紹介します。

ABC分析を難しく使う必要はありません。まずは「行動の前・行動・行動の後」の3つに分けるだけでも、支援記録は大きく変わります。

ABAやABC分析の基本から確認したい方は、子どもの困った行動はなぜ起きる?ABA(応用行動分析)で考える支援の基本もあわせてご覧ください。

支援記録は「今日の報告」で終わるものではない

支援記録には、その日の出来事を残す役割があります。しかし、それだけではありません。

記録を積み重ねることで、

  • どのような場面で困りごとが起きやすいのか
  • どのような環境では落ち着いて参加できるのか
  • どの声かけや見せ方が伝わりやすいのか
  • 以前と比べて何が変わったのか
  • 個別支援計画の目標に近づいているのか

を振り返ることができます。

こども家庭庁の「放課後等デイサービスガイドライン」でも、その日に行った支援の手順や内容、子どもの反応、スタッフの気づきを記録し、その記録を支援の検証や改善につなげることが示されています。

つまり、良い記録とは文章が上手な記録ではありません。

次に関わるスタッフが、同じ場面でより良い支援を考えられる記録です。

ABC分析とは?行動を3つに分けて見る方法

ABC分析は、行動を次の3つに分けて整理する方法です。

  • A:Antecedent(行動の前の状況・きっかけ)
  • B:Behavior(実際に見られた行動)
  • C:Consequence(行動の後に起きたこと)

たとえば、活動の切り替え場面で子どもが大声を出したとします。

このとき、「活動の切り替えで怒った」とまとめてしまうのではなく、前後に分けて見ます。

A:行動の前

自由遊びの終了時間になり、スタッフが「片づけて勉強をします」と口頭で伝えた。

B:行動

子どもは「まだやる」と大声で言い、使っていたブロックを床に投げた。

C:行動の後

スタッフが勉強開始までの残り時間をタイマーで示し、「あと3分遊んだら片づけよう」と伝えた。子どもはブロックを拾い、タイマーが鳴った後に片づけを始めた。

このように整理すると、単に「切り替えが苦手だった」だけでは見えなかった情報が残ります。

突然遊びを終えることが難しかったのかもしれません。言葉だけでは予定が分かりにくかった可能性もあります。タイマーによって終わりが見えたことが、切り替えの助けになったとも考えられます。

ただし、一度の出来事だけで原因を決めつけることはできません。ABC分析は、子どもの気持ちを当てるためのものではなく、前後の状況を整理し、次に試す支援を考えるための方法です。

「解釈」より先に「見た事実」を書く

支援記録で最も意識したいのは、見た事実と解釈を分けることです。

たとえば、次の言葉は便利ですが、人によって受け取り方が変わります。

  • 落ち着きがなかった
  • 不機嫌だった
  • パニックになった
  • ふざけていた
  • わざと困らせた
  • 気持ちを切り替えられなかった

「落ち着きがなかった」と書いたスタッフは、室内を歩き回る姿を指しているかもしれません。別のスタッフは、大声が増えたことを指しているかもしれません。

そこで、まずはカメラで撮影したら確認できるような行動に置き換えます。

曖昧な記録

勉強中は落ち着きがなく、何度も注意された。

事実が伝わる記録

机上課題を始めて約2分後に席を立ち、本棚へ移動する行動が3回見られた。スタッフが課題を3問ずつに分け、終わった箇所へ印をつけると、その後は5分程度着席して取り組んだ。

後者の記録からは、何が起きたのかだけでなく、スタッフが行った支援と、その後の変化まで分かります。

もちろん、記録に解釈を書いてはいけないわけではありません。大切なのは、事実と解釈を混ぜないことです。

課題の終わりが分からないことが離席につながった可能性がある。

このように、「可能性がある」「〜とも考えられる」として、根拠となる事実の後に書くと、チームで検討しやすくなります。

ABC分析で支援記録を書くときの5つのポイント

1.Aには「指示」だけでなく環境も書く

Aには、スタッフが何と言ったかだけを書くわけではありません。

  • いつ、どこで起きたか
  • 誰と過ごしていたか
  • 何をしていたか
  • 予定やルールはどのように伝えていたか
  • 周囲の音や人の多さはどうだったか
  • 睡眠、空腹、体調などの情報があったか

など、行動の前にあった状況を見ます。

たとえば、同じ「活動に参加しない」という行動でも、大人数の活動だけで起きるのか、好きな遊びの直後に起きるのか、説明が長いときに起きるのかによって、考えられる支援は変わります。

すべてを毎回書く必要はありません。普段と違った点や、行動との関係がありそうな点を残します。

2.Bは誰が読んでも同じ場面を想像できるように書く

Bでは、子どもの性格や気持ちではなく、実際に見たり聞いたりした行動を書きます。

「怒った」ではなく、

  • 「いや」と3回言った
  • 机を手のひらで2回叩いた
  • その場にしゃがみ込んだ
  • 課題のプリントを机の下に置いた
  • 友達の肩を両手で押した

のように表します。

回数や時間は、変化を比べるのに役立つ場合があります。ただし、何でも細かく数えれば良いわけではありません。

「離席が3回から1回になった」「活動に参加できた時間が2分から5分になった」など、支援目標や困りごとの変化を確認するために必要な範囲で使います。

3.Cにはスタッフの対応と子どもの反応を書く

Cは「行動の結果」ですが、良い結果・悪い結果を評価する欄ではありません。

行動の後に、

  • スタッフがどう対応したか
  • 周囲の人がどう反応したか
  • 活動や要求がどう変化したか
  • 子どもの行動がその後どう変わったか

を書きます。

対応だけで終わっている記録

絵カードを見せて声をかけた。

反応まで分かる記録

「片づけ」「おやつ」の順番を絵カードで示した。子どもはカードを見た後、床にあった玩具を箱へ入れ、約2分で片づけを終えた。

支援方法を書くだけでは、その支援が伝わったのか分かりません。子どもの反応まで残すことで、次回も続けるのか、方法を変えるのかを考えられます。

言葉だけでは伝わりにくい子への見せ方については、言葉だけでは伝わらなかった子が変わった|視覚支援とAI活用の話で具体例を紹介しています。

4.困った行動だけでなく、うまくいった条件も残す

ABC分析は、他害、かんしゃく、離席などが起きたときだけに使うものではありません。

むしろ、落ち着いて参加できた日や、自分から行動できた場面を記録すると、支援のヒントが見つかることがあります。

たとえば、普段は集団活動から離れることが多い子が、その日は最後まで参加できたとします。

そのとき、

  • 少人数だった
  • 活動の流れを先に見せていた
  • 得意な役割があった
  • 座る場所を自分で選べた
  • 開始前に一人で過ごす時間があった

という条件が分かれば、「できた」という結果を、次の支援で再現しやすくなります。

支援記録は、できなかったことを残すだけのものではありません。できたときの理由を探すための記録でもあります。

5.一日の記録だけで結論を出さない

同じ行動でも、その理由は毎回同じとは限りません。

活動を避けたいときもあれば、やり方が分からず困っているときもあります。周囲に気づいてほしくて行うこともあれば、音や人の多さで余裕がなくなっていることもあります。

そのため、記録には「原因はこれです」と断定するより、

3回とも活動の終了を口頭だけで伝えた場面で大声が見られている。終わりの見通しが持ちにくかった可能性があるため、次回は終了前にタイマーを提示する。

のように、複数の記録から見えた傾向と、次に試すことを書きます。

試した結果も記録し、支援が合っていたのかをもう一度確認します。この繰り返しが、記録を支援の改善につなげます。

曖昧な記録をABCで書き直した例

ここでは、現場でよく見かける記録をABCの形で書き直します。

書き直す前

集団活動では不機嫌になり、友達を押してしまった。スタッフが声をかけると落ち着いた。

この文章だけでは、「不機嫌」がどのような姿だったのか、なぜ友達を押したのか、どの声かけが役立ったのかが分かりません。

書き直した後

【A】5人でボール運びを行った。順番は口頭で伝えており、本人が待っている間に前の子が2回続けてボールへ触れた。

【B】本人は前の子の背中を両手で1回押し、「ぼくの番」と大声で言った。

【C】スタッフが二人の間に入り、順番カードで「次が本人の番」と示した。本人はカードを見て列に戻り、次の順番で活動に参加した。

【考察・次回】順番が分からなくなったことが行動につながった可能性がある。次回は活動開始前から順番カードを提示する。

書き直した記録では、友達を押した事実を曖昧にせず残しながら、「乱暴な子だった」という評価で終わっていません。

次回の具体的な支援まで、スタッフ間で共有できます。

友達を押す・叩くといった行動が起きたときの安全確保と対応は、他害行動をする子どもへの支援方法|2つの実例から考える理由と対応で詳しくまとめています。

忙しい現場で使いやすい支援記録の型

毎日の記録をすべて長文にすると、現場では続きません。

そこで、特に振り返りたい場面だけ、次の型で整理すると書きやすくなります。

支援記録の簡単テンプレート

【目標との関係】個別支援計画のどの目標に関係する場面か

【A:前の状況】いつ・どこで・何をしていたか、どのような声かけや環境だったか

【B:行動】子どもが実際にしたこと、言ったこと

【C:後の状況】スタッフの対応、子どもの反応、その後どうなったか

【考察】記録から考えられること。断定せず仮説として書く

【次回】続ける支援、変えて試す支援、確認したいこと

毎回すべてを埋める必要はありません。

大きな変化がなかった日は、個別支援計画の目標に関係する姿と、行った支援、子どもの反応を簡潔に残すだけでも十分です。

一方で、同じ困りごとが続いている場面や、支援方法を変えた場面、これまでになかった成長が見られた場面では、ABCの形で少し詳しく残します。

記録の濃さをすべて同じにするのではなく、支援の検討に必要な場面へ時間を使うことも大切です。

記録が変わると、会議やモニタリングも変わる

「落ち着きがなかった日が多い」という振り返りだけでは、次の支援を考えることは難しいものです。

しかし、記録に具体的な場面が残っていれば、

  • 人数が多い活動で離席が増えている
  • 終了時間を事前に示した日は切り替えられている
  • 言葉だけの指示より写真を見せた方が動きやすい
  • スタッフが近くにいると要求を身振りで伝えられている

といった傾向を話し合えます。

また、保護者へ「最近は成長しています」と伝えるだけでなく、

以前は片づけの声かけ後に床へ寝転ぶことがありましたが、今月はタイマーを確認してから自分で片づけを始める場面が増えています。

と、具体的な変化を説明できます。

これは、個別支援計画の評価を作るときにも役立ちます。

日々の記録や支援会議の内容をモニタリング、個別支援計画へつなげる流れは、児童発達支援・放課後等デイサービスでAIを導入する前に知っておきたいこと|現役児発管が実際に調べて運用した記録でも紹介しています。

日々の記録とモニタリング、個別支援計画は別々の仕事ではありません。日々の小さな記録が、評価と次の支援方針を支える材料になります。

まとめ|記録は子どもを評価するものではなく、支援を見直すためのもの

支援記録を書くとき、つい子どもの行動だけに目が向くことがあります。

しかし、ABC分析で前後の状況を見ていくと、記録に残るのは子どもの行動だけではありません。

  • どのような環境だったのか
  • スタッフはどう伝えたのか
  • その支援に子どもはどう反応したのか
  • 次に変えられる部分はどこか

まで見えるようになります。

大切なのは、子どもの「困った行動」をうまく説明することではありません。

私たちの支援を、次にどう変えるかを考えられる記録にすることです。

まずは、「落ち着きがなかった」と書きたくなったときに、

「その前に何があった?」

「実際に何をした?」

「その後、私たちはどう関わり、子どもはどう変わった?」

の3つを振り返ってみてください。

その積み重ねが、スタッフ間の共通理解を深め、子どもに合った支援を見つけることにつながります。

参考資料

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